補助金を使ってAIを入れたい。あるいは、増え続ける事務を外に出したい。そう考えている中小企業の方に向けて書いています。

AI導入の見積もりを取ったものの、補助金が使えるのかどうかで止まっている。「補助金が出ます」と言われたが、本当に出るのか確かめられない。そんなとき、見る場所は決まっています。

通る費用は4つ、通らない費用は1つです。

その線は、事務局が公開している要領の3か所にすでに書かれています。見積もりが1本になっていると、通るはずの費用まで判断できません。

この記事では、要領の該当箇所を文言のまま引用し、立ち上げで通る4つの費用と、御社が見積もりをどう分けて出してもらえばいいかを書きます。所要5分です。

結論

立ち上げのときに対象にできる費用は4つです。

導入設定・AI初期学習設定・マニュアル作成・研修。いずれも業務を移すときに一度だけ発生する費用です(これに加えて、納品後の保守サポートも対象になります)。

対象にならないのは1つだけ、月額で業務を代行してもらう費用です。これは推測ではなく、事務局が公開している「ITツール登録要領」に、その線が3か所に書かれています。

見積もりが「一式」で1本になっていると、この線がどこにあるか誰にも分かりません。

立ち上げの費用と毎月の運用費用は性質が違います。実費のとおりに分けて出してもらえば、通る部分と通らない部分がそのまま見えます。

商談の前に確認しておけば、補助金の話で何度も往復する必要がありません。


記事の要点
「補助金が使えるか」で止まらないために

「補助金が使えるか」で止まらないために

AIクミコムでは、中小企業の業務に、その会社だけの仕組みをAIで作っています。相談の中で最初に確認されることの一つが、「補助金は使えますか」です。

答えは、使える部分と使えない部分があります。

問題は、その境目が分かりにくいことです。補助金の解説では「ITツールの導入が対象」と書かれていても、「業務そのものを代わりにやってもらう費用」が対象になるかまでは判断できません。

境目を確認するには、登録要領の3か所を見ます。


月額の業務代行を外している3か所

月額の業務代行を外している3か所

登録要領には、ITツールとして登録できないものが列挙されています。業務代行に関係する条項は次の3つです。

1. カテゴリー6「導入設定・マニュアル作成・導入研修」の登録対象外

(オ)補助事業者の通常業務に対する代行作業費用が含まれるもの

「補助事業者」とは補助金を受ける会社、つまり申請する企業のことです。

通常業務を代わりにやってもらう費用は、この条項で直接外されています。

2. 全カテゴリー共通の対象外

  1. 補助事業者の顧客が実質負担する費用がITツール代金に含まれるもの(補助事業者にとっての売上原価に相当すると事務局が判断するもの)

業務代行の月額は、申請する企業にとって「売上を上げるためにかかる原価」に近い性質です。事務局がそう判断すれば、この条項でも外れます。

3. カテゴリー5「導入コンサルティング」の対象外

(ウ)ITツールの導入とは関連のない、補助事業者の業務そのものに対するものや経営全般に対するコンサルティング費用

「業務そのものに対するもの」は対象外です。ツール導入に紐づかない業務改善の助言や代行は、コンサルティングという名前でも通りません。

3か所で重ねて外されているので、解釈で覆すのは難しいと考えるべきです。


立ち上げ時に対象にできる費用

立ち上げ時に対象にできる費用

同じ要領には、対象になる作業も書かれています。業務を外に移す(移管する)ときの作業は、かなりの部分がここに当てはまります。

カテゴリー5「導入コンサルティング」(交付決定後〜導入開始まで)

要領に列挙されている作業の例:

業務を移すときに行う「今の手順を聞き取る」「例外を洗い出す」「並行稼働の計画を立てる」が、ほぼそのまま書かれています。

カテゴリー6「導入設定・マニュアル作成・導入研修」(導入開始〜納品)

ここでは、「AI初期学習設定」が名指しで対象に入っています。AIに業務を覚えさせる作業は、補助対象です。

カテゴリー7「保守サポート」(納品後〜補助対象期間の満了まで)

サブスク型のソフトウェアの保守は、利用期間内で最大2年分が対象とされています。月額のうち「保守と問い合わせ窓口」に当たる部分は、ここに切り出せます。


役務だけでは申請できない

役務だけでは申請できない

ここは見落としやすいところです。

登録要領では、ITツールが大分類Ⅰ〜Ⅴに分かれています。

大分類Ⅱ・Ⅲ・Ⅳは単独では申請できません。交付申請には必ず大分類Ⅰのソフトウェア(またはⅤ)が含まれている必要があります。

「設定します」「AIに学習させます」「保守します」という役務だけを登録しても、補助金には乗りません。

ソフトウェアとセットになって初めて対象になります。

ソフトウェア側にも登録要件がある

カテゴリー1のソフトウェアとして登録するには、次の条件があります。

特に確認したいのが、3つ目です。1社のためだけに作ったカスタムの仕組みは「一般に販売が開始されている」に当たらないため、そのままでは登録できません。

IT導入支援事業者の登録と同時に行う「先行登録申請」では、汎用プロセス(汎P-07)だけのソフトは使えない、という制約もあります。


使うなら、2つの道がある

使うなら、2つの道がある

道A:コンソーシアムで入る(現実的)

要領には、こう書かれています。

コンソーシアムにおいては、コンソーシアム内の他者が登録したカテゴリー1(ソフトウェア)に対して、(カテゴリー6・7を)登録可能とする

ソフトウェアを持っているベンダーと組めば、「導入設定・AI初期学習設定・マニュアル作成・研修」と「保守サポート」の役務側だけを登録できます。自社でソフトウェアを作って一般販売する必要がありません。

申請する企業から見ると、「そのソフトの導入」として交付申請し、設定・学習・研修・保守の部分に補助が乗る形になります。

道B:自社で汎用ソフトを作って単独登録

業務プロセスを持つ汎用ソフトを開発し、一般販売を開始し、外部審査委員会の審査を通す道です。「依頼を受け付ける画面」程度では通らない可能性が高く、時間もかかります。


補助金を使うと、着手までに時間がかかる

補助金を使うと、着手までに時間がかかる

もう一つ、商談前に確認しておきたい制約があります。

交付決定前に購入・契約・支払いをしたITツールは対象外です。順序は固定されています。

  1. ITツールが事務局に登録されている
  2. 申請する企業が交付申請する
  3. 交付決定が出る
  4. 契約・着手

そのため、「今月から始めましょう」はできません。

交付決定を待つぶん、着手が2〜3か月遅れます。

ITツール登録は当該年度の事業でのみ有効なので、毎年登録し直しになります。


補助金を使うなら、費用を分けて考える

補助金を使うなら、費用を分けて考える

要領に沿って整理すると、こうなります。

| 費用 | 補助対象か | 根拠 | |---|---|---| | 業務を代行する月額 | 対象外 | カテゴリー6(オ)/共通対象外1/カテゴリー5(ウ) | | 移管時の聞き取り・例外の洗い出し・並行稼働の計画 | 対象にできる | カテゴリー5の列挙作業に該当 | | AIの初期学習設定・設定・マニュアル・研修 | 対象にできる | カテゴリー6「AI初期学習設定」を名指し | | 月額のうち保守・問い合わせ窓口 | 対象にできる(最大2年分) | カテゴリー7 | | 上の役務だけを単独で申請 | 不可 | 大分類Ⅲは単独申請不可・ソフトウェアとセットが必要 |

記事内の図

「無料で始める」ではなく、「移管の費用を補助金で1/2〜2/3に落とし、月額は補助なしで払う」のが、要領に沿った現実的な形です。

最初に確認したいのは、「補助金が使えるか」だけではありません。使える形にするには2〜3か月のリードタイムが要るという点です。

急ぐなら補助金なしで始め、2つ目の業務から補助金を使う、という順序も選べます。


参考(一次情報)

どちらも事務局の資料ダウンロードページで、誰でも取得できます。

登録も費用も要りません。

資料ダウンロード(デジタル化・AI導入補助金 事務局) https://it-shien.smrj.go.jp/download/

このページには各資料の更新日が併記されています。上に書いた版と日付が違っていたら、そちらが正です。

※ 本記事は執筆時点で公開されていた要領の記述をもとにしています。要領は改訂されます。年度や改訂で条件が変わるため、申請前に必ず上のページで更新日を見て、最新版をご確認ください。


申請前に、要領の3か所を確認する

申請前に、要領の3か所を確認する

この記事の引用が正しいかは、ご自身で15分あれば確認できます。人に聞く必要はありません。

記事内の図
  1. 上の資料ダウンロードページで「ITツール登録要領」を開く(更新日が併記されています)
  2. カテゴリー6「導入設定・マニュアル作成・導入研修」の「登録対象外」の欄を読む。代行作業費用の条項はここにあります
  3. 全カテゴリー共通の対象外の欄を読む。売上原価に相当するものを外す条項はここです
  4. カテゴリー5「導入コンサルティング」の対象外の欄を読む。業務そのものへのコンサルティングを外す条項はここです

要領は改訂されます。

開いたら必ず更新日を見てください。

この記事の引用と食い違っていたら、要領の側が正です。

商談前に、見積もりを2つに分ける

商談前に、見積もりを2つに分ける

補助金を使いたい場合、見積もりを最初から2つに分けて出してもらうと話が早く済みます。

分けずに一式で出すと、事務局の判断待ちで止まります。分けておけば、対象部分だけを申請に載せられます。

立ち上げ費用と、毎月の業務代行費用を混ぜない。

これが、申請前に見積もりで確認しておきたい線です。

自社が対象になるかどうかは、12項目のチェックで見当がつきます。3つ以上当てはまるなら、外に出せる業務が残っています。

→ 12項目のチェックを開く

noteでも読む →