事務の担当者が複数いて、手順はその人の頭の中にある。休まれると止まり、辞められたら一から作り直しになる。そういう会社の方に向けて書いています。

ある学校内予備校で、事務に関わっていた6人が、1人になりました。

年間の業務コストは約1,000万円下がっています。この2つは、同じ範囲・同じ期間の業務の話です。

この記事では、何をどの順番でやったかと、あなたの会社が同じ状態かどうかを今日確かめる方法を書きます。所要6分です。

結論

削ったのは人ではなく、「人に紐づいていた状態」です。

手順書が社内になく、やり方が担当者ごとに違い、引き継ぎのたびに前任者へ電話する。

この状態のまま人を増やすと、増えた人のぶんだけ属人化も増えます。手順と例外を仕組みの側に移せば、同じ業務を回すために必要な人数は減らせます。

結果として、事務に関わる人は6人から1人に、年間の業務コストは約1,000万円下がりました。

外れた5人ぶんの時間は、集客・生徒対応・電話対応に回り、売上そのものも上がりました。


どういう状態だったか

どういう状態だったか

運営スタッフは30名。案内資料を作り、教室と授業を割り当て、担当者を配置し、生徒と保護者の対応をする。この一連の業務が、紙とExcelと口頭で回っていました。

問題は作業量ではありませんでした。

手順がどこにも書かれていなかったことです。

最後の1行が、この業界では珍しくありません。半年のあいだ、経営者と社員の時間はそこに吸われます。

売上を伸ばす仕事ができなくなるのも、この期間です。

半年の内訳は、たいてい「探す」と「聞く」です。前任者がどこに何を置いたかを探し、分からないところを電話で聞き、それでも埋まらない部分を作り直す。

新しい仕事は1つも増えていないのに、人だけが動いている状態が半年続きます。

しかもこの期間は、引き継いだ人が「その人しか分からない状態」を新しく作る期間でもあります。自分で探して埋めたことは、その人の頭の中に入るからです。

手順書のないまま引き継ぐと、属人化は解消されず、持ち主が変わるだけになります。次に同じことが起きるまでの時間を稼いだにすぎません。

この現場も、まさにその繰り返しでした。人を増やしても止まる回数が減らなかったのは、増やした人のぶんだけ「その人しか分からない業務」が増えていたからです。


人がやっていたこと

人がやっていたこと

| 工程 | 何をしていたか | |---|---| | 案内資料の制作 | 紙で作り、期ごとに一から作り直していた | | 教室割り・授業の割当 | Excelで組み、印刷して配る。変更のたびに刷り直す | | 担当者の配置 | 口頭とExcelの連絡表で回す。連絡表は24件あった | | 引き継ぎ | 講座別・生徒別・日別の情報を、人から人へ口頭で渡す | | 問い合わせ対応 | 同じ質問に、毎回ゼロから答える |

記事内の図

この5つに共通しているのは、「情報が人の側にあった」という一点です。

紙とExcelは置き場所であって、仕組みではありません。置き場所は、それを読める人がいて初めて機能します。


記事の要点
実際に作った仕組み(案内・割当・引き継ぎ・対応集)

実際に作った仕組み(案内・割当・引き継ぎ・対応集)

順番があります。道具を選ぶのは最後です。次のように進めました。

① 作業の中身を、先に見直しました。

どの業務から触るかは、お客様に決めていただいています。 こちらが現場を歩いて「ここが無駄です」と探すことはしていません。

見せていただくのは、正常な流れだけではありません。 例外がどこで起き、誰がどう埋めているかまで見ます。 ここが一番時間のかかる工程です。

② 例外を消さずに、例外ごと仕組みに入れました。

例外を無くそうとすると現場が止まります。 例外は起きるものとして、起きたときにどう扱うかまで含めて設計しました。

③ 誰が使うものかで、道具と範囲を棲み分けました。

同じ画面を全員で使うと、要らない項目が増えて、やがて誰も見なくなります。 使う人ごとに、見えるものと触れるものを分けています。

④ 棲み分けた範囲に合わせて、道具を組み込みました。

案内資料の制作、教室と授業の割当、担当者の配置、引き継ぎを、1本のオンラインの流れに移しています。

引き継ぎメモは日付と担当に紐づき、当日の担当者へ自動で届きます。

⑤ 同じ質問への回答を、対応集にまとめました。

Excelの連絡表24件が、ここに移っています。

新しいツールを買っていないのは意図的です。 買うと「設定する人・直す人」が社内に必要になり、その人が異動すると止まります。 止まらない形まで作ることが、この業務では重要です。


何が変わったか

何が変わったか


残った1人と、外れた5人がどうなったか

残った1人と、外れた5人がどうなったか

この事例で重要なのは、人数が減ったことだけではありません。

残った1人は、その仕組み自体の管理運営に回りました。

事務作業をする人ではなく、仕組みを見る人です。

外れた人たちは、集客・生徒対応・電話対応に回りました。

売上そのものが上がりました。

事務を削る話は、たいてい「何人減らせるか」で終わります。減らした人数は、それ自体では利益になりません。

人件費が落ちるだけです。その人たちが売上を作る側に立って初めて、両側から効きます。

この現場で起きたのは、5人ぶんの時間が、転記と突合から、人に会う仕事へ移ったということです。

転記は誰がやっても同じ結果になりますが、生徒と保護者への対応は、人がやることに意味があります。


自分で確かめる:自社が同じ状態かどうか

自分で確かめる:自社が同じ状態かどうか

費用はかかりません。

今日できます。

記事内の図

① 手順書があるか数える

事務の業務を5つ挙げて、それぞれ「手順書が社内にあるか」を確認します。頭の中にしかないものは「無い」に数えます。

② 代われる人を数える

その業務ごとに、担当者が明日休んだら代われる人が何人いるかを数えます。0人の業務が、止まる業務です。

③ 止まったときの金額を出す

0人だった業務について、次の式で出します。

その業務が止まる日数 × 1日あたりの売上または費用

引き継ぎができずに一から作り直す場合、日数は月単位になります。この現場では半年でした。

半年ぶんを入れて計算すると、たいていの会社で、仕組みを作る費用を上回ります。

④ 使う金額を、思い込みではなく統計で置く

③の式に入れる金額は社内の給与から出しても構いませんが、社外に説明する必要があるときは公的統計を使えます。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、職種・年齢・企業規模別の賃金を誰でも見られる形で公開しています。

賃金構造基本統計調査(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

一般事務の所定内給与を、月の所定労働時間で割ってください。自社の事務1時間あたりの相場が出ます。

社内の数字と大きくずれていたら、その差そのものが検討の材料になります。

引き継ぎと人手不足が業界全体でどうなっているかは、中小企業庁の中小企業白書に章立てで載っています。自社だけの問題なのかどうかを確かめたいときに開く先です。

中小企業白書(中小企業庁) https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/

どちらも登録も費用も要りません。

社内の実感だけで話を進めると、金額の根拠を聞かれた時点で止まります。先に外の数字を当てておくと、その先の判断が速くなります。

③で出た金額が、その業務を放っておいたときに失う金額です。それより安く直せるなら、直したほうが得という線になります。内製でも外注でも、見るところは同じです。


今日から自社だけでできること

今日から自社だけでできること

仕組みを入れなくても、①と②は今日できます。②で0人だった業務は、担当者に1時間だけ時間を取ってもらい、手順を書き出してもらいます。これだけで、明日その人が休んでも止まる範囲が変わります。

書き出す形式は問いません。大事なのは、正常な流れではなく、「例外が起きたときにどうしているか」まで書いてもらうことです。手順書が役に立たない理由は、たいていそこが抜けているからです。


おわりに

事務の人数が6分の1になったのは、みんなが頑張ったからではありません。情報の置き場所を、人から仕組みへ移しただけです。

自社にその状態がどれだけあるかは、12項目のチェックである程度あたりがつきます。3つ以上当てはまるなら、削れる業務は確実にあります。

そのチェックは下のページに置いてあります。メールアドレスの登録は要りません。開いて、当てはまるものを選ぶだけです。

→ 12項目のチェックを開く

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